平行な辺を持つ三角形(面積)

平行な辺を持つ三角形(平行な辺の長さ)で,平行な辺の交点は,平行でない辺上にあることを示しました。よって,その場合には,平行でない辺を底辺とするときの高さは 0 であることになります。これより,平行な辺を持つ三角形の面積は 0 となります。しかし,これでは記事としては物足りないですね。そこで,今回はヘロンの公式を用いて,平行な辺を持つ三角形の面積は 0 を示します。

前回までと同じ座標の設定を仮定します。 $ABC$ において,$s=\dfrac{a+b+c}{2}$ とおきます。面積 $S$ は次式で求まります。 $$ S=\sqrt{s(s - a)(s - b)(s - c)} $$ この式に,平行な辺を持つ三角形(平行な辺の長さ)で得た $$ a=\frac{c\sin\theta_a}{\sin(\theta_a-\theta_b)},\ b=\frac{c\sin\theta_b}{\sin(\theta_a-\theta_b)} $$ を代入して整理すると,次式になります。 $$ S=c^{2}\frac{\sin\theta_a\sin\theta_b}{2\sin(\theta_a-\theta_b)} $$ これより,$\theta_a=\theta_b$ なら,$1/0=0$より,$S=0$ を得ます。

平行な辺を持つ三角形(傍接円)

今回は平行な辺をもつ三角形の傍接円について考えます。座標の設定は前回までと同じです。 f:id:hoinori:20210430012856j:plain 辺 $CA$ に $B$ の反対側から接する傍接円の半径を考えます。この円の中心は次式で表される2直線の交点です。 $$ y=\tan\frac{\theta_a}{2} (x-p), \ \ y=\tan\frac{\theta_b}{2} (x-q) $$ 交点の座標は,この方程式を解いて,次のように求まります。 $$ \left( \frac{p\tan\dfrac{\theta_a}{2}-q\tan\dfrac{\theta_b}{2}} {\tan\dfrac{\theta_a}{2}-\tan\dfrac{\theta_b}{2}}, (p-q)\dfrac{\sin\dfrac{\theta_a}{2}\sin\dfrac{\theta_b}{2}}{\sin\dfrac{\theta_a-\theta_b}{2}} \right) $$ このとき,交点の $y$ 座標は傍接円の半径と一致します。$\theta_a=\theta_b$ のときは,交点の $y$ 座標の分母が 0 になります。すなわち,$1/0=0$ より,交点の $y$ 座標は $0$ になります。よって,平行な2辺を持つ三角形の平行な辺にこの辺に対応する頂点の反対側から接する傍接円の半径は 0 です。今回の内容は [1] から引用しました。

参考文献

[1] H. Okumura, A generalization of Problem 2019-4 and division by zero, Sangaku J. Math., 4 (2020) 45–52.

平行な辺を持つ三角形(内接円と外接円の半径に関する恒等式)

今回は平行な2辺を持つ三角形においても,次の恒等式が成り立つことを示します。 $$R=\frac{r}{\cos A+\cos B+\cos C-1}$$ ただし,$R$ と $r$ は外接円の半径と内接円の半径です。座標の設定は前回,前々回と同じです。 f:id:hoinori:20210418165259j:plain $\theta_a=\theta_b$ と仮定します。すると,前回の結果から $R=0$ です。一方,右辺の分母は \begin{eqnarray} \cos A+\cos B+\cos C-1&=&\cos(\pi-\theta_a)+\cos\theta_b+\cos 0-1 \\ &=&-\cos\theta_a+\cos\theta_b=0 \end{eqnarray} となるので,$1/0=0$ より右辺も 0 になります。

平行な辺を持つ三角形(外接円の半径)

今回は平行な2辺を持つ三角形の外接円の半径を考えます。 前回と同じ座標の設定で考えます。 f:id:hoinori:20210418165259j:plain 外接円の半径を $R$ とします。次の恒等式を使います。 $$ R=\frac{abc}{\sqrt{(a+b+c)(-a+b+c)(a-b+c)(a+b-c)}}. $$ この式に前回得た次の2式を代入します。 $$ a=\frac{c\sin\theta_a}{\sin(\theta_a-\theta_b)},\ b=\frac{c\sin\theta_b}{\sin(\theta_a-\theta_b)} $$ 代入した式を整理したものが以下です。 $$ R=\frac{c}{2\sin(\theta_a-\theta_b)} $$ よって,$1/0=0$ から $\theta_a-\theta_b=0$ なら $$ R=\frac{c}{2\sin 0}=\frac{c}{0}=0 $$ を得ます。

以上より,平行な2辺を持つ三角形の外接円の半径は0となります。

平行な辺を持つ三角形(平行な辺の長さ)

三角形の2辺が平行になった場合の考察を数回に分けて行います。初回は平行な2辺の長さです。 f:id:hoinori:20210418165259j:plain 直線 $AB$ 上の一点を原点とし,図のように$A$, $B$ の座標を $(p,0)$, $(q,0)$ とします。ただし,$p-q=c>0$ です。 $\overrightarrow{AC}$, $\overrightarrow{BC}$ が $x$ 軸となす角を $\theta_a$, $\theta_b$ とすれば,$AC$ と $BC$ は次式で表すことができます。 $$ AC: y\cos\theta_a=(x-p)\sin\theta_a, \ \ \ BC: y\cos\theta_b=(x-q)\sin\theta_b. $$ この2つの方程式を解き,次の交点 $C$ の座標 $(x_c,y_c)$ を得ます。 \begin{equation}\label{EQ1} (x_c,y_c)= \left( \frac{p\sin\theta_a\cos\theta_b-q\cos\theta_a\sin\theta_b} {\sin(\theta_a-\theta_b)}, \frac{c\sin\theta_a\sin\theta_b}{\sin(\theta_a-\theta_b)} \right). \tag{1} \end{equation} よって,$CB$, $CA$ の長さ $a$, $b$ は次式となります。 \begin{equation}\label{EQ3} a=\sqrt{(x_c-q)^{2}+(y_c-0)^{2}}=\frac{c\sin\theta_b}{\sin(\theta_a-\theta_b)}, \end{equation} \begin{equation}\label{EQ2} b=\sqrt{(x_c-p)^{2}+(y_c-0)^{2}}=\frac{c\sin\theta_a}{\sin(\theta_a-\theta_b)}. \end{equation} これより,この2辺が平行なら $\theta_a-\theta_b=0$ で,0除算定義 $1/0=0$ より $a=b=0$ を得ます。すなわり,三角形の平行な2辺の長さは0 です。

(1) より,交点は原点となります。原点は $BC$ 上の点なら,どこに有っても良いので,交点の位置はどこでも良いということになります。この部分のうまい解釈を検討中です。ご意見をお寄せいただければ幸いです。

どうして「0」を割ることはできるのに、「0」で割ることはできないのでしょうか。

q.hatena.ne.jp 解答期限を過ぎてしまっている質問なので,ここに解答を述べます。

解答 現在の数学に欠陥があるからです。

嘘みたいな解答ですが,このブログ記事を閲覧して下さった方にはこのように解答せざるを得ないことを理解していただけると思います。しかし,凄い解答ですね。同様の質問には多くの解答が寄せられているようですが,「0で割ることを現在の数学のしきたりで説明するとおかしくなるからできない」といういつもの理由を挙げているものがほとんどのようですね。

反転

円を用いた反転という変換があります。平面上の円 $C$ の中心を$O$, 半径を $r$ とします。ある点 $P$ と,$O$ を起点とする半直線 $OP$ 上の点で, $$|OP|\cdot |OQ|=r^{2}\tag{1}$$ を満たす点 $Q$ に関して,写像 $P\rightarrow Q$ を円 $C$ に関する反転と呼びます。 f:id:hoinori:20210426071240j:plain しかし,現在の数学では,$P=O$ の場合が考察できず,この場合を除外しています。しかし,0除算を導入し,(1)を次式のようにします。 $$ |OQ|=\frac{r^{2}}{|OP|} $$ すると,$P=O$ のときに対応する点は $P$ 自身であることになり,例外がなくなります。