0除算不可能説の誤り3

前回では0除算と通分は両立しないという結論を得ました。0除算を仮定するなら,通分に不都合が起き(分母が0の場合は通分できません。その他の場合は今まで通り),通分が成り立つなら,0除算は不可能ということになります。このように,数学に新しい概念を導入する際には,その時までに常識と思われていた計算法則等が成り立たなくなることが起こります。歴史上のある時点における数学の常識はその時点における数学の世界の内部に存在するものに対して成り立つだけです。外部にあるものに対しては何も考察しておらず,真偽の保証などできるはずもありません。

例えば,虚数を導入する前の時代では,数の二乗は正でした。そのような時代にあっては,数の二乗は正という法則を主張する限り,虚数は導入できません。同様に常に通分ができることを主張する限り,0除算は不可能ということになります。