0除算の導入 (全単射)

次を満たす実数の集合上の写像 $\psi:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$ を考えます。 \begin{eqnarray} \psi(a) &=& \frac{1}{a}\ \ (a&\ne&0), \newline \psi(a) &=& a\ \ \ (a&=&0). \end{eqnarray} すなわち,$\psi(0)=0$ です。この $\psi$ は全単射または1対1写像と呼ばれます。この $\psi$ を使えば除算は乗算になります。 $$ \frac{a}{b}=a\cdot \psi(b)\ \ (b\ne0) \tag{3} $$ 次に,条件 $b\ne0$ を落とし,$b=0$ のときも含めて,以下のように約束します。 $$ \frac{a}{b}=a\cdot \psi(b) \tag{4} $$ すると,$b=0$ の場合として,前回や前前回と同様の次式を得ます[1]。 $$ \frac{a}{0}=a\cdot \psi(0)=a\cdot 0=0 $$ さてここで問題提起です。(3)のように条件 $b\ne0$ を付けて考えるのと,(4)のように付けないとではどちらが数学的(自然)でしょうか。

この他にも $a/0=0$ がいろいろな方法で導かれます。そこで,今後は任意の数に対して次式を定義し,これを前提に話しをします。 $$ \dfrac{a}{0}=0 \tag{5} $$ ただし,分母が0の分数の通分約分は不都合が起こりますので行いません。

参考文献

[1] H. Okumura, To Divide by Zero is to Multiply by Zero August 2019,
DOI:10.13140/RG.2.2.22927.94885.