hoinori

0で割ることは0を掛けることであることを述べています。

0除算算法による幾何学の考察例 1

本ブログでは、齋藤三郎氏の提唱する0除算定義任意の数を0で割ると0を検証しています。

PCが壊れてしまい,いままで使用していたリンクやファイルが使えなくなりました。記事作成については従来の便利な環境を失ってしまいました。ということで,少しずつ再会します。今回は下図を考えます。

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上の図で,半径 $a$ の円 $\varepsilon$ とその割線 $t$ を固定します。$t$ と $x$ 軸のなす角は $\theta$ で,$x$ 軸上の動点 $Z(z,0)$ から $t$ に引いた接線の足が $F$ です。$F$ で$t$ に接し, $\varepsilon$ に接する円が $\delta_z$ です。ここで,従来の考え方では,$Z$ が $A$ と一致するときは, $\delta_z$ は点 $T$ に退化します。今回はこの場合を0除算算法で考えます。従来の考え方では得ることができない予想外の結果が出てきますので,ご期待下さい。0除算算法については,以下で取り上げました。

hoinori.hatenablog.com

$m=\tan\theta$ とおくと,$t$ は方程式 $t(x,y)=(x+a)m-y=0$ で,$ZF$ は $z_F(x,y)=(x-z)+ym=0$ で表されます。$\delta_z$ の中心と半径を $(p,q)$ と $r$ とすると,次式が成り立ちます。 $$ \frac{t(p,q)}{\sqrt{m^{2}+1}}=-r,\ \ z_F(p,q)=0,\ \ p^{2}+q^{2}=(a-r)^{2}. $$ この3式を,$p$, $q$, $r$ について解き,次を得ます。 $$ (p,q)=\left(w-mv-\frac{a^{2}+z^{2}}{2a},v+mw\right),\tag{1} $$ $$ r=-mv+\frac{a^{2}-z^{2}}{2a}. \tag{2} $$ ただし,$v$, $w$ は以下で与えられます。 $$ v=\frac{a^{2}-z^{2}}{2a\sqrt{1+m^{2}}},\ \ w=\frac{(a+z)^{2}}{2a(1+m^{2})}. $$ よって,(1), (2) の $p$, $q$, $r$ を用いれば,$\delta_z$ は次式で表されます。 $$ \delta_z(x,y)=(x-p)^{2}+(y-q)^{2}-r^{2}=0. $$ ここで,$p$, $q$, $r$ は,$a$, ${m}$, $z$ で表されていることに注意して下さい。 ここで,$\delta_z(x,y)$ の $z=a$ におけるローラン展開を考えます。 $$ \delta_z(x,y)=\sum_{n=-\infty}^{\infty}C_n(z-a)^{n}. $$ 実際にはほとんどの項は係数が0で消えて,$\delta_z(x,y)$ は3つの項の和になります。 $$ \delta_z(x,y)=C_0+C_1(z-a)+C_2(z-a)^{2}. $$ 係数は以下の通りです。 $$ C_0=(x-a\cos2\theta)^{2}+(y-a\sin2\theta)^{2}, $$ $$ C_1=2(-(\cos2\theta+\sin\theta)x+(\cos\theta-\sin2\theta)y+(1-\sin\theta)a), $$ $$ C_2=\frac{(x\sin\theta-y\cos\theta-a)(\sin\theta-1)}{a}. $$

$C_0=0$ が表すのは,点 $T$ です。これは妥当な結果ですね。次に $t$ に平行な $\varepsilon$ の接線は2つありますが,これと $t$ の間に原点 $O$ が位置するほうを考え,接点を $V$ とします。$C_1=0$ は直線を表しますが,$TV$ がその直線となります。また,$C_2=0$ は $V$ における $\varepsilon$ の接線です。

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上図で,$C_0=0$, $C_1=0$, $C_2=0$ が表す図形を赤で示します。直線 $TV$ は $\varepsilon$ に接しませんが,これと $t$ に等角で交わります。赤で示した図がいずれも意味を持つ図形であることは明白ですが。それがローラン展開の定数項以外の係数からも得られるというのは,衝撃的な結果でして,現時点ではうまい説明ができません。いずれにせよ,未知の数学の世界がこの周辺に広がっているということを感じさせる結果です。

今回の記事は [1] を引用しました。

参考文献

[1] H. Okumura, Geometry and division by zero calculus, International Journal of Division By Zero Calculus, 1 (2021) 1-36.

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