∞について

数学において,記号∞を使う際の問題点を述べます。次の2式を考えます。

$$ \lim_{x\rightarrow a}f(x)=7\tag{1} $$

$$ \lim_{x\rightarrow a}f(x)=\infty\tag{2} $$ (1)の右辺の7は数です。しかし,(2)の右辺の$\infty$は数ではありません。ですから,(2)の表現は数学的に大変おかしいです。数が位置するべき所に数でないものがあるからです。

一般に $\lim_{x\rightarrow a}f(x)$ は数や式を表現しています。一方 $\infty$ は上限が存在しない等のある状態を表現しています。ですから,(2) の表現は,異なる属性の2つのものが等号で結ばれるという変なものになっています。

このような表現が $\frac{1}{0}=\infty$ のようなおかしな表現を生む原因になっているのではないでしょうか。

(2)式は左辺の値が存在しないことを表現しているので,存在しないことを明示的に表すものに変更すべきです。

排外的背理法

0除算を否定する論法の多くが,次のような推論をしています。

既存の数学ルールに照らし合わせると,0除算を考えた場合には不具合が生じることから,0除算不可能である。

これは,既存のルールと新規な概念の2つを仮定して矛盾を導き,新規な概念のみを否定するという間違った論法です。

この論法は非常に多く,これを示す名前がある方が便利なので,今後は排外的背理法と呼ぶことにします。

排外的背理法を用いる限り,数学の世界の外側にある革新的な概念の導入は排除されてしまいます。典型的な例をこのブログの初回から5回にわけて手短に解説しました。

0除算不可能説の誤り1 - 1/0=0

0除算不可能説の誤り2 - 1/0=0

0除算不可能説の誤り3 - 1/0=0

0除算不可能説の誤り4 - 1/0=0

0除算不可能説の誤り5 - 1/0=0

直線の方程式(0は否定や存在しないことを表す)

「りんごを0個あげる」の意味は,リンゴをあげないという否定を意味します。「庭には木が0個ある」とは,庭に木が存在しないことを意味します。このように0には他の数に比べて広い意味を持っています。 f:id:hoinori:20210504140359j:plain このような観点から前回に考えた直線の式 $$ \frac{x}{a}+\frac{y}{b}=1 $$ において,$a=0$ なら,この直線の式は $y=a$ になるという結果の意味を考えましょう。

この結果は $a=0$ なら,$x$ 軸に平行な直線を表すことから(中の図),$x$ 切片は $0$ ではなく,存在しないことになります。すなわり,この例では存在しないことを 0 が表しています。

直線の方程式($x$ 切片と $y$ 切片による表示)

直交座標形で直線を表すものに以下の式があります。 $$ \frac{x}{a}+\frac{y}{b}=1\tag{1} $$ これは,$(a,0)$ と $(0,b)$ を通る直線を表します(左図)。 f:id:hoinori:20210504140359j:plain ただし,従来の数学では, $a=0$ と $b=0$ の場合は考察できませんでした。しかし,$1/0=0$ を採用すると,$a=0$ のとき (1) は, $$ \frac{x}{0}+\frac{y}{b}=1, \ \ \ 0+\frac{y}{b}=1, \ \ \ y=b $$ となります(中の図)。同様に $b=0$ なら $x=a$ を得ます(右図)。 すなわち,これらの場合も自然に考えることができるようになります。

$a$ を0に近づけてゆくと,直線は $y$ 軸に近づきます。しかし,ぴったりと $a=0$ となった瞬間,直線は突如90度回転して水平になります。このように0除算が起こる場合にぴょこんと図が飛ぶ現象は0除算につきものです。例えば $y=1/x$ では,$x$が0に近づくと,この式の表す点は $x$ 軸から限りなく離れてゆきます。しかし$x=0$ のときは,$y=0$ なので,原点となり,突如 $x$ 軸上に現れます。このような不連続な現象が当たり前のように起きるので,この世は連続的であるというアリストテレスの世界観は修正されるべきもののように思えます。

平行な辺を持つ三角形(余弦定理)

平行な2辺を持つ三角形に対して,次式で表される余弦定理を考えます。 $$ c^{2}=a^{2}+b^{2}-2ab\cos C, \ \ \ \ a^{2}=b^{2}+c^{2}-2bc\cos A \tag{1} $$ これらが成り立てば,長さ $a$ と $b$ の辺が平行な場合は,$a=b=0$ から $c=0$ となるので,これらの式は一般に成り立ちません。しかし,この場合にも成り立つ式が存在しないわけではありません。例えば(1)を変形した次式は,$a=b=0$ の場合にも成り立ちます。 $$ \frac{c^{2}}{a}=a+\frac{b^{2}}{a}-2b\cos C, \ \ \ \ a=\frac{b^{2}}{a}+\frac{c^{2}}{a}-\frac{2bc}{a}\cos A\tag{2} $$ しかし,平行な2辺を持つ三角形に関しては,2辺の長さと1つの内角を与えた場合に,それらによって決まる三角形は一意ではありません。これは,線分の両端を通る平行線の組は無限個あることを考えれば明らかです。(2) はこの事実を反映したものになっています。例えば,前式においては $a=b=0$ と 角 $C$ を与えても,辺 $c$ は一意に決まりません。このことを考慮すると,(2)のような式にそれほど意義があるとは思えませんね。ということで,余弦定理についてはここまでとします。

平行な辺を持つ三角形(正弦定理)

平行な2辺を持つ三角形について,次式で表される正弦定理が成り立つのか考えます。 $$ \frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=\frac{c}{\sin C}=2R $$ 長さ $a$ と $b$ の辺が平行なら,平行な辺を持つ三角形(平行な辺の長さ)で示したように,$a=b=0$ となります。よって, $$ \frac{a}{\sin A}=\frac{b}{\sin B}=0 $$ を得ます。また,この場合には $C=0$ なので,$1/0=0$ より, $$ \frac{c}{\sin C}=\frac{c}{\sin 0}=\frac{c}{0}=0 $$ となります。さらに,このとき,$R=0$ であることを平行な辺を持つ三角形(外接円の半径)で示しました。よって正弦定理は平行な2辺を持つ三角形についても成り立ちます