hoinori

0で割ることは0を掛けることであることを述べています。

一般化されたアルベロスの合同な円群

線分AB上の一点Cについて、直径がCB, CA, ABの半円をABの同じ側に作るとき、3半円の囲む図形をアルベロスと呼びます。これは以前にも考えました。$C$におけるABの垂線でアルベロスを分割するとき、それらの内接円は合同であることが知られていますが(図1の赤円)、これらはアルキメデスが研究したと考えられており、アルキメデスの双子の円と呼ばれます。今回はアルベロスを一般化して、そこに複数の合同な円が存在することを示します。

図1. アルベロスとアルキメデスの双子の円

一般化したアルベロス

先ず、一般化したアルベロスを定義します。直線AB上の2点$P$, $Q$ に対して、$PQ$を直径とする半円を$(PQ)$で表します。このような半円はすべてABの同じ側にあるものとします。(AB), $(A_1B_1)$, $(A_2B_2)$ が同心のとき、線分AB上の点$C$に対して、5個の半円 $\alpha_1=(CB_1)$, $\beta_1=(CA_1)$, $\alpha_2=(CB_2)$, $\beta_2=(CA_2)$, $\gamma=(AB)$ からなる図を考えます(図2)。$A=A_1=A_2$ならアルベロスが得られます。

図2. 一般化したアルベロス

次の定理を得ました。

定理. 2円$\delta_a$と$\delta_b$が接することなく、次の条件を満たせば、合同である。

(i) \delta_a\delta_b\gammaに内接する。または\delta_a\delta_b\gammaに外接する。

(ii) \delta_a\alpha_1は内接し、\delta_b\beta_1も内接する。または、\delta_a\alpha_1は外接し、\delta_b\beta_1も外接する。

(iii) \delta_a\alpha_2は内接し、\delta_b\beta_2も内接する。または、\delta_a\alpha_2は外接し、\delta_b\beta_2も外接する。

この定理を考えるとき、$\overrightarrow{AB}$と$\overrightarrow{A_iB_i}$が同じ向きか否か、$\delta_a$と$\alpha_i$が内接か外接か、$\delta_a$と\gammaが内接か外接かで場合分けすると、全部で$2^{5}=32$通りの場合があります。ここでは、この定理の証明は省略し、合同な2円が得られる場合を図3から図7で示します。

図3.

図4.

図5.

図6.

図7.

直線となる場合

さて、図5と図7に注目してください。図5ではすべて外接の状態、図7ではすべて内接の状態です。ここで、2円\delta_a\delta_bの半径が増加する場合を考えると、2円が直線になる場合がありそうです(図8)。|CB|=2a, |CA|=2b, |CB_i|=2a_i, |CA_i|=2b_i とするとき、\delta_a, \delta_bの半径 $r_a$, $r_b$は、図5については、次式で与えられます。 $$ r_a=\frac{ab(a_1+a_2)}{-aa_2+a_1(a_2-b)}=\frac{ab(b_1+b_2)}{-ab_1+b_1(b_1-b)}=r_b $$ 図7については、次式で与えられます。同じ分数式ですが、マイナスの符号が付きます。 $$ r_a=-\frac{ab(a_1+a_2)}{-aa_2+a_1(a_2-b)}=-\frac{ab(b_1+b_2)}{-ab_1+b_1(b_1-b)}=r_b $$ さて、それでは2円が直線になる場合を考えましょう。以下の以前の投稿を思い出してください。 hoinori.hatenablog.com すなわち、直線の円としての半径は0なので、 $$ \frac{ab(a_1+a_2)}{-aa_2+a_1(a_2-b)}=\frac{ab(b_1+b_2)}{-ab_1+b_1(b_1-b)}=0 $$ のときに2円は直線になります。分子は正なので、上式は次と同値です。 $$ -aa_2+a_1(a_2-b)=-ab_1+b_1(b_1-b)=0 $$ これを、abについて解くと、次式が得られます。これより、A_1, B_1, A_2, B_2を与えるとき、\delta_a\delta_bが直線となるABを求めることができます。 $$ (a,b)=\left(\frac{a_1b_2(b_1-a_2)}{a_1b_1-a_2b_2},\frac{a_2b_1(a_1-b_2)}{a_1b_1-a_2b_2}\right) $$

図8.