hoinori

0で割ることは0を掛けることであることを述べています。

正2角形

正2角形を定義する方法はいろいろありますが,これが正2角形だ!という決定的なものはないのかもしれません。今回はその中から和算幾何学に現れた問題をヒントに正2角形を定義します。先ず,和算の問題を2つ挙げます。

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上左図は正三角形と交わり, 中心を共有する大円と, 6個の合同な小円のなす図で,大円,小円の半径を $c$, $d$ とすると,$c=7d$ となります。この図を扱った算額の問題は多いです。右の正方形を含む図形では $c$, $d$ を同様に定義するとき,$c=(4\sqrt{2}+7)d$ となります。このような図を一般的に定義してみます。

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定義. 正の整数 $m, n$ が $(m,n)=1$, $m>n$ を満たしている。 $t$ は $O$ を中心とする半径 $c$ の円 $\gamma$ に交わる直線で, $t$ により決まる $\gamma$ の弦の中点でこれに接し,$\gamma$ に点 $T_1$ で内接する円を $\delta_1$ とする。$\delta_2$ は $\delta_1$ と合同で,$t$ に $\delta_1$ の反対側から接し,$\gamma$ に点 $T_2$ で外接する円とする。 $\angle T_1OT_2=\frac{n\pi}{m}$ のとき,$O$ を中心とする角度 $\frac{2n\pi}{m}$ の回転を $\rho$ とし,次を定義する。 $$ {\mathcal D} _ {m / n} = (\cup _ {i = 0}^{m - 1} \rho^{i}(\delta_1\cup\delta_2\cup t))\cup\gamma. $$ この定義で, とくに, ${\mathcal D} _ {m/1}$ は ${\mathcal D} _ {m}$ と書くことにします。これが冒頭の2つの図のキャプションの意味です。

この定義は,星形正多角形にも対応しています。

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この定義で $(m,n)=(2,1)$ の場合を考えると,${\mathcal D}_2$ は下図となります。

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これより,正2角形は2つの平行線ということになります。

ここからは,正2角形の辺の長さを考えます。 ${\mathcal D} _ {m}$ で, $t$ と $\rho(t)$ の交点を $P$ とすると,$P$, $\rho(P)$, $\rho^{2}(P)$, $\cdots$ は ${\mathcal D}_ {m}$ の一部である正 $ m $ 角形の頂点になります。$\theta=\frac{\pi}{m}$ とおくとき,この外接円の半径を $R$ とすると, $$ R=|OP|=\frac{3+\sec\theta}{3+\cos\theta}c $$ となります(証明略)。その辺の長さ $s$ は次式で与えられます。 $$ s=2R\cos\theta. $$

${\mathcal D}_2$ に関しては,$\theta=\frac{\pi}{2}$ なので,$s=0$ です。実は,以前に半直線の長さが0であることを示しましたが,それに呼応する結果になっています。

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一方, $R=c$ より,外接円と $\gamma$ は一致しています。これの解釈は現時点ではできていません。名案がありましたら,よろしくお願い申し上げます。