本ブログでは、齋藤三郎氏の提唱する0除算定義任意の数を0で割ると0を検証しています。
線分 $AB$ 上の1点を $C$ とし,$|BC|=2a$, $|CA|=2b$ とします。直径が $BC$, $CA$, $AB$ の半円を $AB$ の同じ側に作り,これらを , , とします。この図形はアルベロスと呼ばれます。アルベロスとはギリシア語で靴職人の使うナイフを意味します。3個の半円で囲まれる図がこのナイフの形をしていたことから,このように呼ばれるようです。
$AB$ の $C$ における垂線を軸と呼びます。アルベロスは最も有名な平面図形の1つで,様々な面白い性質があります。有名なものはアルキメデスの双子の円です。これは下図に示す か に外接し, に内接し,軸に接する赤い2つの円のことで,半径は次式で表されます。 $$ \frac{ab}{a+b}. \tag{1} $$
(1)の半径を持つ円をアルキメデスの円と呼びます。
双子の円以外のアルキメデスの円の例を考えます。$C$ が原点で, 上の点で $AB$ から最遠のものの座標が $(a,a)$ となる座標系で考えます。このとき,$C$ を通る2円で中心が $(ma,0)$ の円を とし,$(-nb,0)$ の円を $\beta_{ n }$ とします。
円が , , に接するとき,接点がその円上で時計回りに 上の点, 上の点, 上の点となるように並んでいるとき,この円は , , に適切に接すると表現することにします。
このとき,次の定理が成り立ちます(上図)。
定理. , , に適切に接する円がアルキメデスの円であるための必要十分条件は,次式が成り立つことである。 $$ \frac{1}{m}+\frac{1}{n}=1. $$
この定理で,双子の円の場合を考えてみます。アルキメデスの双子の円の図の右側のアルキメデスの円は の場合になります。軸は です。また,左側のアルキメデスの円は の場合です。
ちょっと前の記事で円の半径が0なら,点か直線になることを述べましたが,今回の場合は円の半径が0で直線になっている例ということになります。
今回の記事は[1]を参考にしました。
参考文献
[1] H. Okumura, Semicircles in the Arbelos with Overhang and Division by Zero, KoG (2021) 19-24.