hoinori

0で割ることは0を掛けることであることを述べています。

0除算の導入 (一意性定理)

通分約分を仮定する限り0除算はできないことを述べました。それでは通分約分を仮定しないとき,0除算はどうなるのか。答えは次の定理です。

高橋の一意性定理([1]). 実数の集合$\mathbb{R}$, $a,b,c,d\in\mathbb{R}$に対して,次を満たす写像 $f: \mathbb{R}\times\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}$ を考える。

(i) $f(a,b)f(c,d)=f(ac,bd)$,

(ii) $b\ne0$ なら $f(a,b)=\dfrac{a}{b}$.

このとき,$f(a,0)=0$である。

証明. $f(a,0)=\frac{2}{2}f(a,0)=f(2,2)f(a,0)=f(2a,0)=f(2,1)f(a,0)=2f(a,0)$ より,$f(a,0)=2f(a,0)$。よって,$f(a,0)=0$。証終

この定理の仮定には通分約分と同値な等式(前回の(1))に相当する等式 $f(a,b)+f(c,d)=f(ad+bc,bd)$ が抜けていることに注意して下さい。すなわち,定理は通分約分の仮定を落としたときに,0で割る場合の演算結果を考えるなら,それは0しかないと述べています。

参考文献

[1] M. Kuroda, H. Michiwaki, S. Saitoh, M. Yamane, New meanings of the division by zero and interpretations on $100/0=0$ and on $0/0=0$, Int. J. Appl. Math., 27(2) (2014) 191--198.