数年前に亡くなった Clayton Dodge 氏の0除算不可能論を取り上げます[1]。
彼は,次の3つを仮定します。 $$ a+0=a $$
$$ a \cdot 1=a $$
$$ \frac{a}{b}+\frac{c}{d}=\frac{ad+bc}{bd} $$ そして,$\frac{a}{0}$ が存在するとして,上式で $b=0$, $c=d=1$ のときを考えます。 $$ \frac{a}{0}+\frac{1}{1}=\frac{a \cdot 1+0 \cdot 1}{0 \cdot 1}=\frac{a+0}{0}=\frac{a}{0}. $$ ここで,$\frac{a}{0}=x$ とおくと,$x+1=x$ となります。しかし,このような数 $x$ は存在しないので,矛盾であるとしています。よって,$\frac{a}{0}$ は存在しない。
以上が Dodge氏の論法です。さて,誤りはどこにあるのでしょうか。
仮定しているものは $\frac{a}{0}$ の存在の他に 3つあります。しかし,背理法では $\frac{a}{0}$ の存在のみが否定されているというおかしな議論になっていますね。実は,Youtube等にある論法もこれと殆ど同じ間違いをしています。すなわち,背理法の使用法が間違っています。
詳しくは,このブログの先頭に書きました。
参考文献
[1] C. W. Dodge, Division by zero, The Mathematics Teacher, 89(2), (1996) p.148 .