hoinori

0で割ることは0を掛けることであることを述べています。

接することと直交すること

直交座標形で中心が $(0,a)$で半径 $a$ の円 $\alpha$ を考えます。$\alpha$ と $x$ 軸に半径 $r$ の円が第一象限で接しているとします(左図)。$r=0$ のとき,この円はどうなるのでしょうか。 f:id:hoinori:20210412095954j:plain この円は次式で表されます。 $$ (x-2\sqrt{ar})^{2}+(y-r)^{2}=r^{2} $$ これを変形して,次式を得ます。 $$ x^{2}+y^{2}-4\sqrt{ar}x+2(2a-y)r=0\tag{1} $$ よって,$r=0$ なら, $x^{2}+y^{2}=0$ を得ます。これは原点ですね。これは,$\alpha$ と $x$ 軸に接すると考えることができます。さらに(1)を変形して次を得ます。 $$ \frac{x^{2}+y^{2}}{\sqrt{r}}-4\sqrt{a}x+2(2a-y)\sqrt{r}=0\tag{2} $$ ここで,$r=0$ とすると,$4\sqrt{a}x=0$,すなわち,$x=0$ を得ます。これは $y$ 軸 ですね。これは $\alpha$ と $x$ 軸に直交します。さらに(2)より次式を得ます。 $$ \frac{x^{2}+y^{2}}{r}-4\sqrt{\frac{a}{r}}x+2(2a-y)=0 $$ ここで$r=0$とすれば,$2(2a-y)=0$ すなわち,$y=2a$ を得ます。これは $x$ 軸 から最も遠い $\alpha$ 上の点で $\alpha$ に接する接線です。これは $\alpha$ と $x$ 軸に接すると考えることができます。以上得たものを右図において赤で示します。

前回に述べたように直線の半径は0なので,得たものの半径はみな0です。しかし, 問題となるのが2番目に得た $y$ 軸です。これは $\alpha$ と $x$ 軸に接するのではなく,直交するからです。しかし,ここで思い出していただきたいのは,仁平氏の例で述べた $\tan(\pi/2)=0$ です。この式は直交するもの同士の傾きは0を示しています。すなわち,$y$ 軸も $\alpha$ と $x$ 軸に接すると考えることができます。

[1]では上記の理論展開を和算幾何学に適用しています。

参考文献

[1] H. Okumura, Wasan geometry with the division by 0, Int. J. Geom., 7(1) (2018) 17-20.